琉球大学農学部助教授

マングローブ研究の第一人者

樹木遺伝学を専門とする

日本生態学会員

馬場の基本姿勢

琉球大学に勤務している教官として、これまで学生達に沖縄の自然の貴重さ、壊れ易さなどを

講義してきました。

また、海外ではマングローブ林やその生態系を破壊する原因の一つに観光ホテルの建設が

あるので、不必要な観光ホテルの建設には反対しましょうなどと言ってきました。

今回、私が西表島のホテルの建設に反対するのは「これまでの私の講義や発言に責任を

とるため」であり、私の良心に基づくものです。

沖縄県の観光客は400万人を越え、観光は沖縄にとって極めて貴重な産業であることは

誰もが疑わないところです。 

観光客のこのような増加は、亜熱帯の気候と美しい海に取り囲まれた気候風土、それによって

育まれた独特の文化と人間性が魅力となっていることからではないでしょうか。

沖縄県の環境容量が小さく、環境負荷に対して大変デリケートな自然を守り育てることは沖縄県

が平成13年3月に策定した「みんなでつくる清ら島(ちゅらしま)−おきなわアジェンダ21」の中にもはっきりと

謳われています。

また、国際エコツーリズム年である2002年の11月28日から12月2日まで沖縄県などが主催となり

沖縄コンベンションセンターを主会場として開催された「エコツーリズム国際会議・沖縄」で沖縄県

知事が読み上げた宣言の中でも「沖縄が世界のエコツーリズムをリードする先進地」となろうと

いうような表現があったように記憶しています

(当日、宣言文が配布されなかったので、稲嶺知事が読み上げたものの記憶による)。

亜熱帯独特の気候風土が育んだ自然の豊かさ、またそれを環境に優しい方法で保全・利用していく

ことは私たちに課せられた使命であり、そのことを沖縄県自らが宣言したものが「みんなでつくる

清ら島−おきなわアジェンダ21」であり、エコツーリズム国際会議・沖縄での沖縄県知事の「宣言文」

なのではないでしょうか。

それらの宣言文で言明された宣言を実行するためには、

@「開発面積が環境アセスメントを実地する面積以下であること」などを理由として、「西表島の豊かな自然に

ホテル建設がどのような影響を及ぼすか?」の環境アセスメントを実地することなく今回ホテルが建設される

ことは、過去の同様な開発がこれまでに取り返しのつかないほどに自然を壊滅的に破壊してしまった多くの

事例をまったく学習していないということばかりではなくて、西表島の自然を再生することが不可能な程

破壊してしまうことになるかもしれません。したがって、面積の如何にかかわらず、自然に優しい

エコツーリズムや清ら島を目指すのであれば、ホテルの建設を開始する前に、十分な環境アセスメントを

実地されることを求めます。

A豊かな自然を守り、それを商品として観光客を誘致するためには「廃棄物と給排水」、「移動方法、騒音と危害

(動植物に対しての騒音と危害)」をどのようにするかを十二分に考えなくてはいけません。ホテルの建設

ばかりではなくて自然や文化を商品として観光客を誘致する企業であるならばその責任上「ゴミなどの

廃棄物の処理方法、給水の確保方法、排水の処理方法、宿泊客の輸送方法、動植物への騒音と危害の

軽減方法等」にどのように対応するのかが明確にされる必要があります。もし、それらのことに対して、

明確な方策が策定されていないのであれば、ホテルを建設する企業はその策定までホテルの建設を延期し、

沖縄県はその策定に協力し、沖縄県自ら策定した

「みんなでつくる清ら島−おきなわアジェンダ21」を単なる絵に描いた餅にすべきではありません。

B昨年9月11日のニューヨークでのテロ事件以来、海外への観光客の渡航が減少し、沖縄県への観光客が

増加していますが、海外への渡航に比較して格段に高い航空賃と、海外のホテルに比較して格段に高い

ホテル代と土産代を考えると時、今後とも現在と同様な沖縄県への観光客数の維持あるいは増加を確保

することは決して容易ではありません。もしそうであるならば、観光客数の維持あるいは増加の源となるのは

豊かな自然と文化以外にはないことになります。人口が2000人にも満たない西表島に、2000人もが

宿泊できるホテルを建設して、訪れた観光客に対して誰がどのように西表島の伝統的な文化や自然の

豊かさを教えるのか具体的な方法と、ホテルの推定稼働率を誰にでもわかるように明示することは、

環境と共生する文化を次世代へ引き継ぐためにも必要とされることであり、ホテルを建設する企業と沖縄県の

責任ではないでしょうか。