八重山毎日新聞「論壇」への投稿(2003.5.8)

「即時リゾート開発中止を」

(衣斐 継一)


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竹富町長は、初めに役場移転ありきでの論理であり、移転する以上、市町村合併の必要はなく、財源として大型リゾートが必要という論理のようです。庁舎移転は島民の悲願であり、総論賛成ですが、残念ながら時機を失してしまいました。
町長は、具体的な財源の確保をうやむやにし、独断的に町民の福祉に逆行すると思われる判断を行い、リゾート開発で西表島の自然環境に多大な負荷をかけ、貴重な自然を破壊しようとしています。市町村合併に関しての、本紙二月十五日社説は実に当を得たものであり称賛に値し、改めて説明の要を感じませんが、中央政府による、市町村合併は性急で、一方的で、原則的には反対です。しかし、国家財政が破たん寸前の状態では致し方なく、また、八重山は一つの文化圏として、合併することは、理にかなった部分も多く、多くの離島を抱える竹富町には、より有利な条件での合併こそが、町民福祉につながる選択であると、私は考えます。
合併をしなければ、交付税は減額され、住民サービスは極端に低下し、役場移転の費用は子々孫々に借金として残され、財政破たんか、重税にあえぐことになります。また、竹富町の分裂の危機もあります。
月ヶ浜リゾートホテルは、促進派の言われる通り地域振興になるかも知れません。しかし、二百四十室の大型リゾートではインフラの整備も必要だし、県外資本ではどれだけの振興になるか疑問です。治安の悪化や交通事故の増大という目に見えないデメリットも多く、そのデメリットの大きさと、誰がそれを負うかをもっと慎重に検討する必要があります。
リゾートホテルにより税収や雇用が拡大したとしても、既存の中小の宿泊施設が、廃業に迫い込まれれば果たして地域振興といえるのでしょうか。また、自然環境への負荷がどれだけ大きいか検証する必要があります。しかし、開発企業は法律的な規制がないことを理由に、簡単な環境調査を環境アセスメントと称し、経済アセスメントもせず、細切れにして、開発を進めようとしています。私たちは地元住民の合意のない強引な開発に対して、懸念や慣りを感じ、反対せざるを得ない状況です。
イリオモテヤマネコの主な生息地域は標高百五十m以下の低地で、開発地域は餌動物のセマルハコガメや、キシノウエトカゲ等の缶息地で、人間の干渉がなければヤマネコの生息域です。現に県道の反対側はヤマネコの出没地域です。現在ヤマネコは約百頭で、目撃情報などでも減少傾向にあります。ほ乳類の種の維持には二百〜三百頭が必要とされていて、絶滅への秒続み
が始まっている状態にあります。
交通量の増加に伴い、ヤマネコも輪禍に遭うことになり、絶滅が早まることは必至です。また、月ヶ浜はウミガメ産卵の記録もあり、減り続けるウミガメ保護のために今後保全していくべき場所です。ウミガメの産卵が見え、カンムリワシが飛來する魅力的なこの自然環境を生かした、小規模なホテル建設を私は望みます。
また、手付かずの自然は、人間にとって必ずしも快適な空間ではなく、西表島はリゾート建設には不向きな場所で、勢い環境破壊の方向に走りがちです。本来行政は、開発企業と地元住民の活し合いの場を提供するなどの調整を果たす義務があると思います。しかし、竹富町長は開発企業側のサイドに立って、強引な開発を推進しています。
町はごみ問題、水道供給、自然環境、住民感情など諸問題の解決や説明責任があるはずです。町職員は町長の権利の乱用に対して、勇気を持って内部告発されることを期待します。
離島で遠隔地のために奇跡的に残された、西表の自然は、旧島民だけのものではなく、地球の宝であり、守る責任もあります。日本生態学会の要望を踏まえ環境アセスメントを実施し、西表の素晴らしい自然を残し受け継ぐための協議検討を行い、西表島に見合った地域振興をすべきだと考えます。ヤマネコの保護をはじめ自然保護に努力し、環境後進国のわが国をリードする環境先進地域となることが、八重山や竹富町の生き残りの道であると、私は確信します。関係各位の前向きな対応を期待します。

八重山郡竹富町南風見仲29-74
52歳 農業、自然ガイド
0980(85)5530