(ここに示された文章は、<『ムー』2001年9月号 緊急レポート 文=中野雄司 写真=毎日新聞社>より、電磁波問題市民研究会が抜粋したものです)


子供たちに使わせていいのか?

次世代携帯電話でアタマに異常が起きる!?

登場以来、わずか数年にして、若い世代を中心に爆発的に広がる携帯電話。街に出れば、そこかしこで携帯電話を手に、楽しげにふるまう姿が目に入る。

だが、思わぬ危険がそこに迫っている。現代社会の必須アイテムである携帯電話は、人類に破滅的な未来をもたらす「凶器」になるかもしれないのだ!

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携帯電話の使用が記憶力を低下させる

 最近、大学生の学力低下が大きな話題を呼んでいる。
 暗算ができない、漢字が読めない、作文ができない、などの信じがたい大学生の惨状が日本各地で報告されている。識者の間では、小・中学校での基礎対な教育ブログラムの見直しが急務であるとの議論がもっぱらのようだ。
 しかし、学力低下の原因が基礎教育のカリキュラムにおるというのは、本当にそうなのだろうか。
 一昨年末、米国ワシントン大学の生物工学研究室で、ある興味探い実験が行われた。その実験は、日本の大学生の学力低下の背後に無気味な事実が隠されていることを示唆しているように恩える。
 かいつまんで紹介しよう。
 実験は、米国立衛生研究新の依額を受け、ワシントン大学生物工学研究室の教授であるヘンりー・ライ博士の手で行われた。
 ライ博士は、まず100匹のラットを水を張った大きな水槽仁入れ、エサを置いた台まで泳ぐルートを学習させた。ラットたちが間違いなくエサまでのルートを覚えるまで訓練を縁り返した後、博士はラットをふたつのグルーブに分けた。そして一方のグループには微弱な電磁波を照射する。この電磁波は、米国で一般的仁使われている携帯電話から発する電磁波とほとんど同じ波長、同じ出力のマイクロ波である。
 しかる後に、博士はラットたちを再び水槽のなかへ放った。すると、電磁波を浴びなかったグループは学習した通りエサ台まですいすいと泳いでいった。が、もう一方の電磁波を照射されたラットたちは、エサ台までたどりつけなかったのだ。
 運動能力に問題が生じたわけではない。ラットたちは元気に泳ぎ囲っていた。しかし、彼らは自分たちがどこへ向かうべきがかわかっていないようだった。そう、ラットたちは学習したはずのルートを忘れてしまったのてある!
「これは、電磁波がラットの長期記憶機能に影響を及ぼす可能性があるという結果を示した初めての研究てある」
 と、ライ博士は語った。
 もちろん、この結果をすぐに人間に当てはめて議論することはいささか乱暴であり、推測には慎重な姿勢が必要だろう。
 しかし、携帯電話から発せられる電磁波が生物の記憶機能に損傷をもたらす可能性については、疑うに十分な根拠を示しているように思える,ましてや、日本の現状を振り返ってみれば、その疑いはさらに色濃いものとなる。
 思いだしてほしい。
 大学生の学力低下が叫ばれはじめた時期と、携帯電話が若者の間で爆発的に流行しはじめた時期はほぼ重なるのだ。とすれば、両者の問には何らかの因果関係があるのではないか。
 携帯電話が使用者の記憶や学習能力に影響を及ぼす可能性があるとしたら、やがて私たちの社金は恐るべき事態に直面することになる。いま現在も携帯電話の普及率は増えつづけており、使用者の低年齢化傾向にはさらに拍車がかかっている。
 これから問題は大学のみならず、高校生や中学生の間にまで波紋を広げていくだろう。足し算引き算が理解できない高校生や、日本語の読み書きすらできない中学生が誕生する−−。
 まさかとは思うが、そんな恐るべき社会がすぐそこにまで迫ってきていないとだれが保証できるだろうか。

高性能化する機能と公開されないデータ

 携帯電話の危険性について、専門家はこれまでに幾度となく指摘を繰り返してきた。携帯電話が人体に及ぼすさまざな影響についての研究は欧米を中心にさかんに行われ、その研究成果は、あくまでも客観的なデータとして全世界に公表されている。
 にもかかわらず、一段の利用者が携帯電話の危険性について十分認識しているかというと、はなはだ疑わしい。とくに日本仁おいては、その傾向が顕著である。
 たとえば日本では、今月末、世界に先駆けて次世代携帯電話のサービスが開始される。おそらく新聞・雑誌・TVなどのメデイアはみな、こぞってこの話題を華々しく報じるだろう。
 たしかに、新たに登場する次世代携帯電話は注目に値する。度肝を抜くほどの高性能・高機能は、まさにリトル・モンスターと呼ぶにふさわしい。なんとその通信速度は、理論値で2メガbpsを実現した(bps=ビット・パー・セコンド。1秒間に送ることのできる情報量を表す単位)。
 ちなみに、この2メガbpsという通信速度は、ISDN回線の30倍以上の速さであり、従来型の携帯電話と比較すれば、その速度は200倍を超える。
 技術者たちが自画自賛するように、たしかにこの通信速度ならば映画をリアルタイムで配信することも不可能ではない。ただし、あくまでもあんなチマチマした画面で映画を見たい、と考えるヘソ曲がりな人間が存在すると仮定しての話だが。
 しかし−−たかが電話機に、こんなべらぽうな通信速度がなぜ必要なのか、と問う声ば聞こえてこない。だれもが疑問もなくリトル・モンスターの高性能・高機能ぶりを賞賛し、手放しで喜んでいる。
 いや、その前にもっと重大な疑問がある。
 これだけの高性能・高機能を実現するために、次世代携帯電話から発せられる電磁波が、従来型のものとくらべてどれだけ増大したのかをだれも気にしていないし、疑問に感じてもいない。
 これば実に恐ろしいことだ。
 携帯電話メーカーは、次世代携帯電話の高性能・高機能ぶりをアピールするために、あらゆるデータとスペックをカタログ上に麗々しくうたいあげている。
 そのカタログのなかでたたひとつ抜けているデーター−それが電磁波強度を表すデータなのだ。
 このことを、なぜ一般利用者は疑問に思わないのだろうか。

安全な携帯電話は幻の技術だった?

 あらためて断るまでもないだろうが、携帯電話メーカー各社は、携帯電話が人体に悪影響を及ぼす可能性について真っ向から否定している。携帯電話は絶対に安全だといいきる。その高圧的な口ぶりは、一昔前のタバコ製造メーカーを彷佛とさせるものがあるが、まあこの際それはいいとしよう。
 しかし、だ。
 もしもメーカーが主張するように携帯電話から出る電磁波が人体に悪影響を及ぼさないのなら、なぜ彼らは電磁波強度をカタログに載せようどしないのか。安全についての絶対の自信があるのなら、堂々と公表すればよろしい。かたくなに公表を拒む彼らの姿勢こそが、携帯電話の危険性を雄弁に物語っているといえよう。
「頭隠して尻隠さず」とは、こういうことをいう。
 海外ではこんな話がある。
 スウェーデンのエリクソンという会社は、世界第3位のシェアを誇る欧米有数の携帯縄話機メーカーである。3年ほど前、エリクソンは自社で開発された基礎的な研究成果を、将来の商品化にそなえて特許申請した。
 ところが、この特許のなかには、「利用者の健康を損なわないための新型アンテナ」だの「電磁波との安全な距離を保つシステム」だのという名目の特許が数多く含まれていたことか判明した。
 当然、マスコミはいろめきたった。そんな特許を申請するということは、現在使われている携帯電話が危険であるということをメーカー自身が認めたことになるからだ。結局、この件についてエリクソン社は、終始苦しい弁明を強いられることになる。
 が、その後エリクソン社ば驚くべき決断を表明し、業界を騒然とさせる。本年2月、なんとエリクソン社は製造部門を売却し、携帯電話製造事業から撤退することを発表したのである。結局「健康を損なわない携帯電話」は開発が困難であり、幻の技術にすぎなかったということなのだろうか。

<写真>携帯電話の電磁波と脳腫瘍との関係について報じる新聞記事
●2000年5月2日・朝日新聞「脳腫瘍と電磁波 関係ある?ない?。携帯電話の影響解明へ。患者らの使用状況調査。郵政省、各国と連携」
●2000年8月6日・東京スポーツ「米の著名医師が872億円訴訟。携帯電話で脳腫瘍の衝撃」

電磁波の恐怖は発生源との距離

 携帯電話をめぐる諸問題とは、結局のところ電磁被の危険性に集約される。ところが、この電磁波というものは、だれもがよく耳にしている言葉でありながら、実は意外にわかりにくい。
 電磁波を専門的に定義するとかなりややこしくなるが、ひらたくいってしまえば電気(もしくは磁気)エネルギーが生じたとき周囲に発生する波動のことである。つまり電気か流れるところには、すべて電磁波が生じる。意外に思われるかもしれないが、紫外線や赤外線も電磁波だ、エックス線やガンマ線もそう。もちろん、ラジオやテレビの電波も電磁波である。
 この広い意味での電磁波のうち、波長が非常に短いものをマイクロ波と呼ぶ。このマイクロ波が携帯電話から発せられている電磁波である。電子レンジで食品を加熱調理するさいに用いられているマイクロ波は、携帯電話から出る電磁波と非常に波長が近い。
 もちろん、電磁波はレンジやパソコン、テレビなどあらゆる家電製品から放出されている。電気の流れるところには、必ず電磁波が生じるからだ。
 問題はそのエネルギーの強さである。いや、距離の問題といったほうがいいかもしれない。
 電磁波の強さは距離の2乗に反比例するという法則がある。この「距離の2乗」というところがミソだ。この恐ろしさをほとんどの人が正確には理解できてない。
 電磁波の発生源とあなたの距離が2分の1になったとしよう。受けるエネルギーは近づいた距離の2乗で4倍強くなる。さらにその半分近づけば、電磁波の強さは16倍となる。このように半分ずつ距離を縮めていけば受ける電磁波の強さは、64倍、256倍、1024倍、4024倍、1万6384倍と指数関数的に増大していく。
 しかも携帯電話は頭部に密着して使用される。つまり電磁波の発生源との距離はほぼゼロ。どんなにわずかで微弱な電磁波であろうと、とてつもない影響力を被ることはおわかりだろう。しかも人間の頭部には、とりわけナイーブな脳の神経細胞が密集している。
 携帯電話が人体に影響を及ぼすことはないどいう主張は、ちゃんちゃらおかしくて子どもにでも見抜けるたわごとにすぎない。

日本の法規制は世界に遅れている

 携帯電話が人体に重大な影響を及ぼす危険性については、これまでにも多くの科学者が実験を繰り返してきており、その科学的・客観的なデータを発表してきた。それらの研究については、本誌238号の記事てすでに紹介してあるのでここでは繰り返さない。興味のある方は、バックナンバーを参照していただきたい。
 欧米ではそれらの研究成果をもとに、政府による厳しい法規制が次々と実施されている。
 45ぺージの表は、中継基地局からの電磁波規制の各国の現状をまとめたものだが、日本の法規制を基準値の甘さはまさに突出しているといっていい。
 スイスやイタリアの基準植の約100倍がら250倍、オーストリアのザルツブルクの1万倍、オーストラリア・フォローゲン州の規制値とくらべれば、実に100万倍もの強力な電磁波を野放しに垂れ流しているというのが現状だ。
 いったいなぜ、こんなことになってしまうのだろうか。

中継基地局からの電磁波規制と高周波の規制値について

国名等 規制値(マイクロW/cm2) 備考
スイス 4.2または4V/m 連邦政府が昨年2月より
イタリア 10 ただし自治体は 2.5
ロシア 2.4 または 3.2V/m
中国 6.5 または 5.0V/m
ICNIRP 450
日本 1000
ザルツブルグ 0.1 オーストリア(提案中)
フォローゲン州 0.001 オーストラリア(提案中)

 電磁波問題市民研究会の事務局長である大久保貞利氏は次のように語る。
「電磁波の影響には熱作用と非熱作用との2種類があります。日本政府は電磁波の熱作用は認めても、非熱作用の危険性を認めないので、このような甘い基準、欧米の常識からかけ離れた規制を行っているのだと恩います」
 簡単に説明しよう。
 熱作用とは、電子レンジの仕組みを思いだしていただけれぱすぐに理解できるはずだ。波長の短い電磁波を一定時間照射すると、対象物内部の水の分子が激しく振動し、その摩擦熱によつて対象物の温度が上昇する。これを電磁波の熱作用と呼ぶ。
 一方、非熱作用とは、それ以外の電磁被の影響を総称して指すものだ。代表的なものとしては、たとえば脳腫瘍や自血病など発ガンリスクの増大、血中リンパ球の減少、免疫力の低下などが動物実験などにより報告されている。
 大久保氏によると、非熱作用は熱作用よりもはるかに少ない電磁波強度で起こりうるという。つまり、日本政府の規制は、発ガンリスクの増大や免疫力の低下などの人体にとって重大な影響を無視した、きわめて危険なものであるということだ。

DNAの破壊により子孫にも悪影響が

 これまでの研究によると、電磁波の非熱作用は、成人よりも若年層において善しい影響を及ぼすことが明らかになっている。昨年5月、英国政府の諮問を受けた調査委員会は、最新の研究成果を取り上げ、末成年の携帯電話使用を控えるよう勧告案を提出した。
 またWHO(世界保健機構)は、携帯電話と脳腫瘍の因果関係を探る研究を世界14か国の共同調査で行うプロジェクトをすでにスタートしている。
 その他にも、携帯電話による電磁波の非熱作用は次のような影響を及ぼすことが報告されている。
 頭痛、めまいや吐き気、睡眠障害、不整脈、集中力の低下、血中脂肪の増加。高血圧、勃起障害、異常出産・・・。
 しかし、電磁波の非熱作用が恐ろしいのは、それがたんに疾病を誘発するだけでなく、細胞内の遺伝子レベルに損傷をもたらす可能性があるというこどだ。
 遺伝子レベル−−つまりDNA構造が破壊されるとどうなるのか。いったん損傷を受けたDNAは、間違った設計図をもつ細胞を次々と生みだしていく。当然、細胞が発達中の若年層においてその影響が著しいものとなる。
 また、遺伝子レベルでの損傷が、ときに世代間へ伝えられる可能性も否定できない。親から子へ、子から孫へとDNAの欠損が受け継がれることもあるのだ。
 ひょっとすると数十年先の未来のある時代に、私たちは子や孫の世代から激しく糾弾されるかもしれない。なぜ携帯電話などという危険なものを使いつづけたのか、と。なせ科学的データを無視し、警告の叫びに耳をふさぐ愚かな行為をつづけたのか、と。
 そのとき私たちは、どう答えたらいいのだろう。
 みんなが使っていたから?
 政府が安全だといったから?
 そんな弁明を、はたして子や孫の世代が受け入れてくれるだろうか。許してくれるだろうか。

<写真>携帯電話の電磁波問題について報じる新聞記事
●2000年8月28日・朝日新聞「携帯電話でペースメーカーが誤作動。真後ろより離れた方が危険!?。京都府中小企業センター、電磁波の回折確認」

社会に蔓延していく「恐るべき子供たち」

 これまで携帯電話の危険性は、主に発ガンりスクの増大などといいった重疾を中心に語られてきた。
 しかし、冒頭で紹介した記憶障害のような、一見重大な疾病とは思えないトラブルや悪影響が少なからずあることが、近年の研究で明らかになってきた。
 たとえば、オーストラリアの医師グループは、携帯電話を長時間使用することで頭皮の神経が損傷したと思われる患者たちについての報告を行っている。
「頭皮の神経の損傷」などというと何やら難しいが、わかりやすくいえば、携帯電話を使っていると頭髪の毛根がダメージを受け、ときにはハゲになる可能性があるということだ。
 またダメージを受けるのは頭皮の神経だけではなく、頭の皮膚が損なわれる可能性についても議論が行われている。この場合、シミ、ソバカス、ニキビなどが増大する危険性がある。
 いまや若者のオシャレな必須アイテムてある携帯電話が、実は若ハゲや肌荒れの原因になるとは、なんとも皮肉なものである。
 さらに米国の研究者は、脳の神経ホルモンであるセロトニンの分泌が抑制されることから、さまざまな情緒障害が引き起こされたり、感情の抑制が困難になるなどの危険性について警告を発している。つまり、携帯電話の流行はキレやすい子どもの増大に手を貸しているということになるのだ。
 なんと憂鬱な未来なのだろう。
 これから育つ子供だちは、極端に頭が悪く、若ハゲのうえに肌はボロボロ、キレやすくちよっとしたことで感情を爆発させる。そんな「恐るべき子供たち」が、日本社会に蔓延するようになるというのだろうか。
 もっとも、この記事はいたずらに読者の恐怖心を煽り立てるのが目的ではない。あくまでも、携帯電話の潜在的な危険性について、一般の人々に客観的な認識を深めてもらたいと願っているだけだ。
 そのために必要なことは、まず政府やメーカーがすべての情報を公開することだ。科学的なデータをもとに、携帯電話がどこまで危険なのかを、オープンな姿勢でとことん話し合うべきだろう。
 現状のままではそれができないい。政府やメーカーは都合の悪いデータをひたすら隠そうとる。一方、利用者は、自分たちの安全を守るための情報について積極的に知ろうとはしない。
 安全はタダでは手に入らないことを、もっと多くの人が認識すべきだ。時間と労力をかけ、自らの手で勝ち取るものなのである。
 とりあえず下に、この問題に長年取り組んでいる電磁波問題市民研究会のURLを紹介しておく。有益な情報や無味深い報告が紹介されているので、自分の安全を守るためにも、ぜひ参考にしていただきたい。


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